「社長、今期は儲かってますね!」と言われて、お金がない時がありませんか? (C-1 1/3)

 事業では利益が出ているのに、利益ほどキャッシュが残っていないという現実を実感したことがありませんか?
更に、利益がでているため、税金を支払わなくてはならず、その税金を払う現金さえ事欠くこともあるかもしれません。
 この現象はなぜ起こるのでしょうか?その原因は利益と収支の計算の違いにあります。
 たとえば、商品を仕入れた金額より高く売れれば「利益」がでます。
 でも、売った代金の回収が滞れば現金が入ってこないため「利益」と同じだけの「収支」は得られないことになります。
 また、現金で支払ったものすべてが「利益」を計算するときに「費用」として控除することができる訳ではありません。
 これらの差額が利益と収支の差異を生むのです。
 損益計算で求められる「利益=儲け」と収支計算で求められる「収支=現金残高」の違いについて、考えてみましょう。

   

 1.損益計算と収支計算の両方を検討する必要があります。

 2.今、社長は、損益と収支のズレを感じて事業を進めていますか?

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chap2

 損益計算と収支計算の両方を検討する必要があります。

 

 損益計算とは 「いくら儲かったのか」 を計算することで、収支計算とは「(お金は)いくら残高があるのか」を計算することです。

 簡単な例を挙げて、考えてみましょう。

@ 85万円の家具を仕入れ、代金は翌月の末に支払うこととします。

A 翌日、仕入れた家具を120万円で販売し、代金は翌月に受取ることとします。

 以上の取引を通して、会社の「損益計算」と「収支計算」を計算してみましょう。

 

1.損益計算


 損益計算とは「いくら儲かったか」を計算するのですから、この例の場合、85万円で仕入れた家具を120万円で売ったのですから、儲かったお金は35万円ということになります。

収益 (120万円) − 費用 ( 85万円) = 利益 ( 35万円) 

 つまり、損益計算とは、ある一定期間の「収益の総額と費用の総額とを比べ、どれだけ利益(または損失)があったかを計算すること」をいいます。


2.収支計算


 収支計算とは「(お金は)いくら残高があるのか」を計算しますので、この例の場合は、現金収支をみれば、すぐに現金の残高を計算できます。
 現金の総収入は、販売代金の120万円であり、逆に現金の総支出は、仕入代金として支払った85万円になります。
 よって、その差額35万円が現金残高ということになります。

 総収入 (120万円) − 総支出 ( 85万円) = 現金残高 ( 35万円)

 

3.損益計算と収益計算のズレ


 ここで、「ある一定期間」が今月末までの場合と、翌月末までの場合とでそれぞれ計算してみましょう。

<今月末までの場合>

 損益計算は、

     収益 (120万円) − 費用 ( 85万円) = 利益 ( 35万円)
 のままですが、

 収支計算は、仕入代金の支払い及び販売代金の回収は翌月末であるため、

     総収入 (0円) − 総支出 ( 0円) = 現金残高 ( 0円)
 となります。

  通常、現金による取引よりも「掛け」による取引のほうが多いですから、上記のような期間のズレはよく発生し、損益計算と収支計算とは一致しなくなります。

 

<翌月末までの場合>

 損益計算は、

    収益 (120万円) − 費用 ( 85万円) = 利益 ( 35万円)
 のままですが、

 収支計算は、仕入代金の支払い及び販売代金の回収は翌月末であるため、

    総収入 (120万円) − 総支出 ( 85万円) = 現金残高 ( 35万円)
 となり、ここで初めて一致します。 

 このように、損益計算は、売上や仕入が発生した時に収益・費用を認識し(これを発生主義といいます。)収支計算は実際に現金が動いた時に収入・支出を認識します(これを現金主義といいます。)。
 この違いがズレの生じる原因となっています。

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chap3

 今、社長は、損益と収支のズレを感じて事業を進めていますか?

 

 以上のように、損益計算と収支計算は、「掛け」がある場合には一致しないことがわかりました。
 しかし、一致しない原因は他にもあります。

 もうひとつ、別の例を挙げて考えてみましょう。

<当期の取引>
 @ 資本金1,000,000円を元手に街頭で花を売る会社を設立しました。
 A 中古のトラックを700,000円で、花瓶など必要な備品一式を180,000円で購入しました。
 B 市場で、@¥100の花を6,800本仕入れ、代金680,000円を現金で支払いました。
 C Bの花のうち、5,000本を@¥300で販売し、代金1,500,000円を現金で受取りました。

<留意事項>
 @ 中古トラックは、5年の耐久性があるものとします。
 A アルバイト料を480,000円支払うものとします。
 B 税金は利益に対し、実効税率40%で期末に支払うものとします。
  

  以上の取引を通して、会社の「損益計算」と「収支計算」を計算してみましょう。


1.損益計算


 まず、当期の収益は5,000本の花を@¥300で販売したので1,500,000円です。
次に、この収益を得るためにかかった費用を計算します。
(1) 仕入
  @¥100の花を6,800本仕入れていますが、そのうち当期に売れたのは5,000本で残りの1,800本は期末現在「在庫」として認識し、翌期以降の収益に対応します。
 よって、当期の仕入は5,000本の花に係る仕入分の500,000円となります。
(2) 備品一式
   消耗品に該当しますので、当期の費用となります。
(3) 中古トラック 
   トラックも、花の販売に係る費用ですが、5年間の耐久性があるということから、資産(減価償却資産)と認識し、5年間に渡って費用に配分する必要があります。
 これを「減価償却」といい、その方法は多種ありますが、今回は、資産の全額を均等償却する定額法により計算することとします。
 よって、当期の減価償却費(費用)700,000万円÷5年=140,000円となります。
(4) アルバイト料
   当期の費用となります。
(5) 費用の合計
    500,000円+180,000円+140,000円+480,000円=1,300,000円

 収益 (150万円) − 費用 ( 130万円) = 利益 (20万円)
 

なお、期末に当期の利益(もうけ)に対し、40%の税金(20万円×40%=8万円)を支払うこととなるため、税引後利益は12万円の黒字になります。

 上記の内容を「損益計算書」として表示すると以下のようになります。             

 損益計算書(P/L)
T 売上   
1,500,000円 
U 売上原価     
 仕入 
680,000円
 
 期末在庫
-180,000円
500,000円 
売上総利益 
 
1,000,000円 
V 販売費及び一般管理費     
 消耗品費 
180,000円 
 
 減価償却費 
140,000円 
 
 アルバイト料 
480,000円 
800,000円 
税引前利益 
 
200,000円 
税金
 
80,000円 
税引き後利益 
 
120,000円 

※在庫の数量 ¥100×1800本 

 

2.収支計算


収支計算は、お金の流れをみます。
(1) 収入
  最初の出資1,000,000円と、花の売上代金1,500,000円の合計額2,500,000円が収入となります。
(2) 支出
 まず、最初に支出した中古トラックと備品の購入代金880,000円と、期中に支出した花の仕入代金680,000円とアルバイト料480,000円及び期末に支払った税金80,000円の合計額2,120,000円が支出となります。

総収入 (250万円) −総支出 ( 212万円) = 現金残高 (38万円) 

  現金残高は38万円ですが、100万円は元々自分の財産であるキャッシュを会社に出資したものだったから、事業で得られたキャッシュは実質62万円も少なくなっています。

 上記の内容を「キャッシュフロー(収支)計算書」として表示すると以下のようになります。

 キャッシュフロー計算書
営業活動によるキャッシュフロー    
 売上代金回収
 +1,500,000円
 
 仕入れ代金支払
 -680,000円
 
 消耗品購入
  -180,000円
 
 アルバイト料支払
    -480,000円
 
 税金支払
    -80,000円
 
営業CF
 
 +80,000円
投資活動によるキャッシュフロー    
 中古トラックの購入
  -700,000円
 
投資CF 
  
-700,000円
財務活動によるキャッシュフロー    
 出資金 
 +1,000,000円
 
財務CF 
 
 +1,000,000円
当期キャッシュフロー 
 
+380,000円


3.損益計算と収益計算のズレ


 最初に立ち返ってみましょう。
「儲かった利益20万円はどこに消えた?」

 事業で儲かった利益は20万円だったので、8万円の税金を支払いました。
 でも、実際に現金は増えるどころか、最初の元手を使い込む結果となってしまっています。
 この原因を明らかにしてみましょう。

純利益(税引前)   
 200,000円
「20万円はどこへ?」     
@儲かった利益に対する税金 
-800,000円 
 
A中古トラックの購入 
-700,000円 
 
BAの減価償却 
+140,000円 
 
C花の在庫(1800本) 
-180,000円 
-820,000円 
   
-620,000円 
 

 以上を分析してみましょう。
 @  利益が出たため発生したものです。
 AB 「固定資産の購入(中古トラック)」は当期の「費用」にならず、資産の増加となるためバランスシートに計上されます。

 なお、それを耐用年数(5年間)に応じて費用処理していきます。
 C  「期末に売れ残った棚卸資産(花の在庫)」は当期の「費用」にならず(翌期以降売れた段階で費用となります)、資産の増加となるためバランスシートに計上されます。

 つまり、設備投資(中古トラックの購入)や、在庫を抱えてしまうことが、キャッシュフローを悪化させる原因となると言えそうです。

 もしも最初の資本金が50万円で始めたら、期末のキャッシュ残高はマイナスになり、「事業が大変だ」ということが容易に推測できますね。

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